「65歳以降も働きたい」約4割。厚生年金「ひとりで月額15万円超」の人は何パーセントか

人生100年時代を迎え、高齢者の労働状況も変化してきています。

2021年、高年齢者雇用安定法の一部改正があり、企業は70歳までの就業機会の確保が努力義務となるなど、高齢者の労働環境が整いつつあります。

背景には、働く意欲がある高年齢者が増えてきていることも改正に拍車を掛けています。

今回は、65歳以降も働きたいと考えている高齢者の実情を解説するとともに、その背景に何があるのか見ていきましょう。

また、老後生活の主な収入源である厚生年金を月額15万円超えもらえる人は男女それぞれ何パーセントいるのかもみていきたいと思います。

その1. 65歳以降も働きたい割合は?

令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、2022年4月以降、年金の繰り下げ受給が75歳までへ拡大されることが決定しました。

この法改正は、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためのものです。

これまでは、70歳までの繰下げで最大42.0%の増額(増額率はひと月0.7%)でしたが、75歳まで繰り下げると最大84%増額の幅が広がるということです。

今回の年金受給改正法を受けて、株式会社エイチームフィナジー様が2022年1月21日~24日に全国の10代~50代の男女525名に実施した調査では、65歳以降も働きたいと答えたのは40.6%と高い結果となっています(2022年2月24日公表)。

これは、定年後もできる限り長く働き続けることで、老後も収入を安定して確保しようと考える人が多い結果です。

さらに、同じ調査項目の「年金の受給開始タイミングを後にずらそうと思いますか?」という質問に対しては、「はい」が20.8%、「いいえ」が31.4%という結果になっています。

若い年代は、長く働けると考える一方、年代が上がれば雇用や健康面など外的要因により長く働けないと思っている方が多いようです。

その2. 厚生年金「ひとりで月額15万円超」の人は何パーセント?

まず、日本の公的年金制度について確認しましょう。

日本の公的年金制度は2種類あり、日本国内に住所があるすべての人が加入を義務づけられていて、働き方によって加入する年金制度が変わってきます。

①国民年金:日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入するもので、老齢・障害・死亡により「基礎年金」を受けることができます

②厚生年金:厚生年金保険の制度を通じて国民年金に加入する第2号被保険者に分類され、国民年金の給付である「基礎年金」に加えて、「厚生年金」を受けることとなります

図にするとこのようになります。

2021年12月に公表された厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、男女別の1万円レンジの受給権者数のグラフを見てみると、男性のボリュームゾーンは17~18万台、女性は9万円台ということが分かります。

実際に受給されている年金の平均月額は、次のとおりです。

厚生年金の平均月額(※国民年金の金額を含む)

  • 全体:14万4,366円
  • 男性:16万4,742円
  • 女性:10万3,808円

厚生年金の全体の平均月額は約14.4万円です。

しかし、男女別にみると、男性で約16万円、女性は約10万円とかなり差があります。

厚生年金は、加入月数や収入に応じて納める保険料により、将来の受給額が左右されますので、結婚や出産・子育てで加入期間が少なくなる可能性が高い女性は、平均月額が下がる傾向にあります。

それでは、平均月額に近い、15万円以上を受給できる人はどれくらいの割合でいるでしょうか。

厚生年金を15万円以上受け取っている割合は、全体の46.4%です。

ただし、男女でその割合は次のようになります。

  • 全体:746万8,721人(46.4%)
  • 男性:697万3,138人(65.0%)
  • 女性:49万5,583人(9.2%)

女性のうち、「年金15万円」の壁を越えられるのは、約9.2%にしかすぎません。

つまり、女性の約9割は、厚生年金を15万円も受給できない状況なのです。

老後資金を検討するうえで、長生きする可能性が高い女性の方が、この事実に向き合い、真剣に考える必要性が高いと言えるのかもしれません。

その3. どうやって老後に備えていくのか?

株式会社エイチームフィナジー様が実施した先ほどの調査では、老後資金をどのようにして確保しているのかも聞いています。

その結果が、こちらのグラフです。

行われている工夫としては、「積み立て貯金(自分で)」(35.6%)「個人年金保険への加入」(20.4%)「つみたてNISAへの加入」(17.9%)「idecoへの加入」(12.0%)と続き、金融商材や非課税制度を活用し税制上の優遇措置を受ける方法など様々です。

その他にも、勤務先で退職一時金や企業年金制度がある場合は、制度内容とおおよその支給額について把握しておきましょう。

また、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」やインターネットサービス「ねんきんネット」を利用して、ご自分の受給額を把握しておきましょう。

このように公的年金だけでは、老後の資金が足りなくなるのは明らかです。

ご自分のライフプランを定めて、早くから準備して手を打つことで、描いてきた老後を迎えることができるかどうかが決まってくるのです。

貴方はどの様な老後を迎えたいですか?

その4. まとめ

国は、高齢者が働きやすい環境を整備しようとしていますし、高齢者もお金だけではないかけがいのないものを得るために働こうとしています。

それは、長い老後を迎えるために必要なことでもあるのです。

具体的には、以下の三つです。

  • ①毎月一定の収入を得られる安心感
  • ②社会と繋がり、孤独から逃れられる満足感
  • ③規則正しい生活で伸ばす健康寿命

働く年金世代の割合は年々増えており、その傾向は今後ますます増加するでしょう。

今後も国は、働く意欲のある高齢者を後押しする政策を新設したり、さらに拡充していくものと思われます。

貴方も、人生100年時代を健康で充実した老後を迎えるためにも、積極的に働きに出ることと共に、老後の資金形成を少しでも早いうちから検討して、実行に移してみてはいかがでしょうか。

【参考記事】

・年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

・日本年金機構「年金の繰下げ受給」

年金の繰下げ受給|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

・PRTIMES「老後の資金計画と年金受給改正法に関する意識調査を実施 年金受給改正法を受け、約4割が“65歳以降も働きたい”」

老後の資金計画と年金受給改正法に関する意識調査を実施 年金受給改正法を受け、約4割が“65歳以降も働きたい”|エイチームのプレスリリース (prtimes.jp)

・厚生労働省 いっしょに検証! 公的年金~財政検証結果から読み解く年金の将来~

日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)

・厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 (mhlw.go.jp)