100歳からさかのぼる! 退職後資産取り崩し方のカギは◯◯だった
老後の資産運用に関して、「将来の老後に備えてどうやって貯めるべきか」が重要ですが、それと同じくらい重要なことは、「貯めた老後の資産をどうやって取り崩したらいいか」ということです。
要するに、物事には全て入口があるのと同様に出口があり、老後の資産運用においても出口戦略が重要であると言えます。
人生 100 年時代に突入し、退職後の人生も長くなりますので、退職後も引き続き投資して資産運用を継続しながら、資産を取り崩す時期や金額、資産運用を終わらせる時期など、
出口戦略も事前に検討しましょう。
今回は、老後資産の取り崩し方について解説していきたいと思います。
これから老後を迎える方のみでなく、すでに老後を迎えている方にも参考となる内容となっていますので、是非ご覧ください。
その1. 老後の資金は幾ら必要なのか?
老後のライフプランを設計するうえで最も大事なことは、目標資産額を決定することです。
人生100年時代に突入した現在、65歳で会社を定年退職した後、約35年間に老後の資金としていくら必要なのかを算出しておくことが重要です。
自分のライフスタイルに合わせた目標額の設定が必要になるのです。
具体的には、次のような手順で必要な額を算出します。
実際に数字をあげて計算します。
- まず、定年退職する直前の年収を900万円と想定します。
②その額に、目標代替率(最終年収に対する退職後の生活費の水準)を掛けます。
この割合を今回は、60%とします。
③①と②を掛け合わせた結果が、退職後、一年間で使用する金額になります。
④③の金額に、100歳まで生きると想定して残りの年数35年を掛ければ、退職後に必要な金額の総額が算出できることになります。
実際に計算した結果がこちらです。
- 定年退職する直前の年収900万円
- 目標代替率を60%
- 一年間で使用する金額=900万円×60%=540万円
- 退職後に必要な総金額=540万円 × 35年 = 1億8,900万円という結果になりました。
全国民に衝撃を与えたいわゆる「2,000万円問題」とは一桁違う数値になりましたが、これをどうやって充当するのかみていきましょう。
その2. 老後の資産を充当する方法は?
老後に必要な総額が把握できましたが、今度はそれをどの様にして充当するのか考えます。
その内訳として、次の三つが考えられます。
①公的年金
- 就労収入
- 保有資産を切り崩す資産収入の3つです。
一つずつ詳しくみていきましょう。
- 公的年金
厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、ひと月の公的年金の平均年金月額は次のとおりです。
老齢厚生年金の平均支給額:月額14万4366円です。
共働き夫婦が受給する公的年金の月額は約28万円になりますので、老後に受け取る金額は、28万円 × 12か月 × 35年間 = 1億1,760万円となります。
②就労収入
定年退職した65歳から70歳までは、夫婦共に元気でパートタイマーなど短時間労働で働いて収入を得るとして、夫婦二人のひと月の収入を10万円と想定すれば、5年間の合計で600万円(=10万円 × 12カ月 × 5年間)の収入となります。
老後に必要な金額、1億8,900万円から、公的年金で得られる1億1,760万円と、就労収入で得る600万円を差し引いた6,540万円という金額が、資産収入で補わなければならない金額となります。
③保有資産を切り崩す資産収入
6,540万円という金額は、2,000万円よりもっと高額になっていますが、65歳の時にこの6,540万円を揃えておく必要があるかと言えば、答えは「ノー」です。
6,540万円という金額は、あくまで資産収入で必要な金額ですので、退職時点でこの金額を準備しておく必要はありません。
仮に、すでに6,540万円という資産を保有しているのであれば、資産を運用する必要はありません。
しかし、充分な保有資産が無い人は、65歳で定年を迎え、その後も資産の運用を継続しながら、必要な生活費を引き出していくことになります。
資産運用を継続しているのであれば、その運用益も資産収入に組み入れることができますので、その分必要な資産収入を減額できます。
それでは、退職後の資産取り崩しは、どの様にすればいいのかみていきましょう。
資産取り崩しは、前半は定率、後半は定額がポイント
65歳で定年退職し、100歳まで35年間に必要な金額6,540万円を算出しましたが、退職後はある一定期間資産運用を継続しつつ、生活費を低率で使用するといった「使いながら運用する」ことが重要です。例えば、65歳で退職したあと80歳まで15年間は運用を継続し、その間の生活費は定率で資産を取り崩しながら運用します。
取り崩す額は、残高の4%、運用収益率は3%と仮定すると、資産は年率で1%ずつ減少することになります。
そして、80歳になったら残りの資産を100歳までの20年間で「均等」に割り、定額で引き出すようにしましょう。
このようにすると65歳で準備した資産の約1.4倍の資産の取り崩しが可能になります。
ですから、65歳時に準備しなければならない資産は、取り崩し資産の総額6,540万円
から逆算して約4,600万円となります。
65歳時に4,600万円が準備できていればよいことになります。
続いて、具体的な運用方法についてみていきましょう。
資産運用の2つのポイント
資産運用についてV、重要なポイントが2つありますので、それぞれ詳しくみていきましょう。
運用収益率について
まず、運用収益率を想定してみましょう。
20年を超えて、実績のある投信の8割が「3%」以上の収益をあげているというデータがあります。
iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)を利用して運用していれば、販売手数料や税金がかからないため、純粋な手取りとなります。
従って、「3%」を運用収益率と設定することにします。
積み立て投資額
続いて、毎月の積立額です。
まずは、年代ごとに年収を想定してみましょう。
平均年収を30代500万円、40代700万円、50〜65歳900万円と仮定します。
それぞれの年収の10%を積み立て投資に回すことができると、30代で月4万円、40代で月6万円、50代と60代前半で月8万円を積み立て資金に充てることができます。
これを年率3%で運用し続けられれば、30歳からの35年間で計算すると、4,312万円積み立てることができます。
このような運用をすることで65歳時に約4,600万円の資産を準備することが出来るのです。
もちろん毎月の積立額を増やせばさらに資産を増やせることはいうまでもありません。
まとめ
人生100年時代に突入し、定年退職した後100歳まで必要な金額を算出すると共に資産の取り崩し方法をみてきましたがいかがでしたでしょうか?
ポイントは、2つです。
一つは、100歳から逆算で考えて資産の取り崩しは、前半は定率、後半は定額で行なうことです。
もう一つは、年収の1割強を年率3%で積み立て投資を、早いうちからおこなうことです。
ご自分の老後のライフスタイルを具体的にイメージして、それを実現するための行動を早いうちから行ない、夢に見た老後を実現してください。