「高齢者は裕福」はホント?60代の貯蓄を数値から検証。つみたて投資「放置でOK」は本当か?

「高齢者は裕福」はホント?60代の貯蓄を数値から検証。つみたて投資「放置でOK」は本当か?

総務省統計局が、2022年6月20日に発表した「人口推計」を見てみると、日本の総人口は1億2,493万人と前年同月に比べ約80万人も減少しています。

その内訳を見ますと、15歳未満人口と15~64歳人口は、前年同月に比べそれぞれ減少している一方、65歳以上の人口は3,621万5,000人と前年同月に比べ0.45%増加しています。

「高齢者は裕福」と良く耳にしますが、ホントなのでしょうか?

65歳以上の高齢者が実際にどれくらいの貯蓄額を所有しているのかを様々な視点から見てみましょう。

「高齢者は裕福」は本当か?年代別の貯蓄と負債の関係について

先ほどと同様に総務省統計局が公表している「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、世帯主の年齢階級別での貯蓄と負債の関係は下表のとおりです。

貯蓄現在高をみると、40歳未満の世帯が726万円と最も少なく、60歳以上の年齢階級では2,000万円を超える貯蓄現在高となっています。

負債現在高をみると、40歳未満の世帯が1,366万円と最多で、年齢階級が高くなるほど負債現在高は減少に転じています。

このように高齢者が高額の資産を保有しているということは、数値からも読み取れますが、65歳以上の無職世帯が本当にどれだけの資産を保有しているのかも確認しておきましょう。

65歳以上の無職世帯。平均貯蓄額の推移と資産配分は?

こちらも総務省統計局が公表している「世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況 」から世帯主が65歳以上無職世帯の貯蓄の種類別貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯) を年次別に集計した表がこちらになります。

このように、2016年以降の貯蓄現在高は、2,000万円超で一定の額を保っています。

また、2021年の金融資産の種類別保有割合をみると、通貨性と定期性を合わせた預貯金の割合が約7割を占めています。

前年の数値と比較すると、預貯金の割合は若干減少しているものの、有価証券や生命保険は増加しており、積極的な資産運用をしようとする姿勢が数値からも見て取れます。

60代の貯蓄の格差はどれくらいか?

金融広報中央委員会が発表した令和3年の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」から、60歳代の金融資産保有額の貯蓄分布と平均貯蓄額を見てみましょう。

出典:金融広報中央委員会 「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(令和3年)

この調査結果から、平均値は2,427万円、中央値は810万円となりますが、偏りがあるデータの場合、平均値は高額貯蓄世帯の影響により高い方に引っ張られますので、平均値ではなく、実態に近い中央値も参考にします。

平均値は、2,000万円を超えていますが、3,000万円以上が22.8%もいて、一部の富裕層と呼ばれる人たちが中央値である810万円を押し上げているとみられます。

その一方で、金融資産非保有者が約2割に達していることから、貯蓄の格差も広がっていることが分かります。

「つみたて投資は放置でOK」は実は間違い?老後資産を減らさないためのポイント

将来の老後資産に備える上で良く聞かれるのは、つみたてNISAやiDeCoといった制度です。

これらの制度は、投資による売却益や配当金、分配金にかかる税金が非課税となりますので、税金を抑えるという点でも大きなメリットになります。

どちらも「投資信託」という形式が多いですが、『毎月コツコツ積み立てる』ことや『分散投資』ということで人気があります。

特に若い時から長期間に渡って投資することで、元本増加と複利効果が見込めます。

だからと言って、積み立てを始めたらそのまま放置で良いのか?と言えばそうではありません。

若い時から始めた「資産運用」は、自分が高齢になるころや、経済状況など環境の変化に応じて、運用方法を見直す必要があるのです。

せっかく増やせた老後資産も、使いたいタイミングで余計な手数料が掛かったり、資産価値が下がったりする可能性があるからなんです。

将来、自分の年齢や目的にあった商品や運用方法へ切り替える必要性を頭の片隅に入れて、資産運用をスタートさせましょう。

【参考記事】

・総務省統計局「人口推計」

統計局ホームページ/人口推計(令和4年(2022年)1月確定値、令和4年(2022年)6月概算値) (2022年6月20日公表) (stat.go.jp)

・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2021_gai4.pdf

・金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]各種分類別データ(令和3年)

家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年調査結果|知るぽると (shiruporuto.jp)